こんにちは、あきらです。
今回はアトピー性皮膚炎に関して書いていきます。本稿は中村健一著 診療所で診る子供の皮膚疾患を参考に記載しています。例のごとく重要な点からまずお示ししたいと思います。
- アトピー性皮膚炎は皮膚が乾燥して痒みが止まらない状態が続きます。保湿剤と外用薬を十分に塗ることで良い状態を保つことができます。また、内服のかゆみ止めを使うことで、普段の生活で気にならないレベルまでコントロールすることができるはずです。
- かゆみ止めの外用薬、保湿剤を使用します。どちらが欠けても治療はうまくいきません。かゆみ止めの中でも「ステロイド薬」と「タクロリムス外用薬(プロトピック®)」に分けられます。浸潤している(じゅくじゅくしている)部位にはステロイド、そうでない場合にはタクロリムスを使用します。
- タクロリムスを使い始めたときには、初めに少し刺激が出ます。ただ、徐々に慣れて来ることが多いので、使用開始した際にはびっくりするかもしれませんが、とても良い薬なので、医師の指示のもと継続していただければと思います。(最初は塗る部位を制限し、徐々に使う部位を広げていく場合もあります。)
- 定期的な通院が必要です。アトピー性皮膚炎のお子さんは、皮膚の表面のバリアーが一部壊れている状態にあるため、皮膚の感染症を合併することがあります。「なんとなくいつもと湿疹の様子が違うな」「赤く腫れてて熱をもっている」など、気になる皮膚症状を見つけた場合にはクリニックを受診してください。
- 保育園・幼稚園・学校での一切の制限はありません。
- 伝染性膿痂疹(とびひ)など合併している場合には参加できませんが、基本的にプールもOKです。
とまあ長くなりましたが、こんなところがポイントになります。 何より、「保湿」「清潔維持」「ステロイド外用」がメインの治療となります。気にかけなければならないのは、皮膚症状が良くなっても、再発してしまうことがあるという点です。そのため、治療が長期にわたることも多いです。ただ、皮膚の症状を直して、完治するまでコントロールすることが大事なので、キチンとかかりつけの小児科の受診をお願いします!
ではここからは一般的なアトピー性皮膚炎の概要に関してご説明します。
定義
そもそもアトピー性皮膚炎ってなに? という疑問があると思います。
アトピー性皮膚炎の定義・診断基準(日本皮膚科学会)には、
アトピー性皮膚炎は増悪・寛解を繰り返す、そう痒感のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ。
アトピー素因:①家族歴・既往歴(気管支喘息、アレルギー性鼻炎・結膜炎、アトピー性皮膚炎のうち何れか、あるいは複数の疾患)、または②IgE抗体を産生しやすい素因
との記載があります。うーん、アトピー素因のなかにアトピー性皮膚炎の既往も含まれるのね、IgEってなんなん、と短い割にはわかりにくいんですが、その後の診断基準はもっと細々とした記載があります。
しかし、小児科医、皮膚科医的には大抵診ればわかります。簡単に示すと、
「常に掻きむしっていて、独特のザラザラした乾燥肌であり、外用薬としてステロイド・保湿剤を使用するも中断するとすぐに再発しやすい疾患」なのです。
他に考慮するべき疾患は、脂漏性皮膚炎、接触皮膚炎、汗疹、魚鱗癬などあります。自己判断することなく、疑わしければ小児科か皮膚科を受診し、治療をしていきましょう。
(原因に関しては様々な要因があり、書いていると前後編ではすまなくなってしまうので割愛します)
合併症
皮膚表面に病変が有り、外からの細菌感染や真菌感染に対して弱くなっています。
単純ヘルペス感染があれば、カポジ水痘様発疹症、
黄色ブドウ球菌の感染があれば伝染性膿痂疹、
白癬やカンジダ、輪癬などの感染をきたす場合もあります。
また目が痒くなって掻きむしっていると、若くして白内障になってしまう場合もあります。
治療
慢性疾患であり、軽快と再燃を繰り返す場合があります。皮膚症状を良く維持するため、下記の治療を行っていきます。
①まずは悪性因子の除去
何がお子さんの肌の状態(バリア)を破壊しているのか。お風呂でのこすりすぎ、肌に合わない保湿薬の使用、ザラザラした下着をきていたり、食物が原因の場合もあります。
ある要素を除去したら良くなった、あるいは悪くなったという点を評価しなければなりません。保護者の方とそれを探っていく必要があります。
汗を放置することも悪化因子です。ただ運動制限をする必要はありません。汗で蒸れていたらあらうか濡れタオルで拭いてあげてください。
特定の食物を食べた後に皮膚炎が悪化する場合にはその食物を避けてください。
また、ダニ、ハウスダストが原因の一つである可能性もあります。室内環境は清潔にするよう心がけてください。
②外用薬
炎症を抑えるため、外用薬を使用します。増悪部位で、湿っている湿疹があるときにはステロイドの外用薬を使用します。初めは十分に強い薬を使用し、軽快を診て徐々に軽いものに変えていきます。速やかに増悪部位の改善をはかり、ステロイド外用薬を使う期間を短くしたほうが良いとされています。
2歳以上であれば湿った発疹が軽快してからは「タクロリムス(プロトピック®)外用」の使用も考慮します。ステロイド外用薬の例として、激しいかきむしり部位があれば、アンテベート®を使用します。(長期使用はできません!) 症状が軽快してきたら、リドメックス®コーワ軟膏、アルメタ®軟膏などに変更します。
見た目がきれいになってからも1日おきに薬を継続し、1-2週間経過観察しましょう。それで再燃なければ医師の判断のもと、漸減、中止としましょう。
③保湿剤の使用
乾燥は何よりもアトピー性皮膚炎に良くありません。ステロイド外用+保湿剤(ワセリンとかヒルドイド®など)の合わせ技が治療に欠かせません。
症状が治まってステロイドを中止した後もしばらくは保湿剤の使用は継続が望ましいです。
④薬の塗り方
正しい塗り方としては「まず手を洗い、お父さんお母さんの人差し指の先端から第一関節まで薬を出したら、その薬は大人の両手の掌と同じ程度の面積の皮膚に、乗せてから全体に広げるように塗ってください」「擦り込む必要はありません」とお話しています。ただ、必ずしもこの通りではなく、洋服やおむつが直接触れる部分には少し厚めに塗ってあげたほうが良いです。
余談ですが、人差し指の先端から第一関節までの軟膏の量をフィンガーチップユニット(FTU)といいます。
⑤抗ヒスタミン薬の内服
掻痒感を抑えるために抗ヒスタミン薬の内服も使用します。
なるべく眠気の出ない薬を選択し、皮膚症状の軽快とともに内服終了を検討します。
最後に
皮膚の痒みはお子さんの不快感を高めます。アトピーのお子さんが来院された際には、なるべく早く良くなるようにと診療をしています。アトピーがよくなって終診とする日を楽しみに、毎日のスキンケアと治療をがんばりましょう!
ここまで読んでくださってありがとうございました。
これからもシンプルでわかりやすい医療情報のシェアを続けていきます。