こんにちは、小児科医あきらです。
そろそろ最高気温の上昇がみられそうですね。今年は梅雨が長引いて憂鬱な気分でした。しかし、激烈に暑かった去年を思い出すとそれだけでぐったりしてしまいそうです。今日からはフジロックフェスが始まります。これから夏フェスなど、外でのイベントが増えてきます。運動の機会もあるでしょう。そういった環境では熱中症のリスクが高まります!今回は熱中症に関してのお話をしようと思います。
熱中症とは?
人は体温を平熱に保つために汗を書きます。 体内の水分、塩分の減少や血液の流れが滞るなどして、体温が上昇し、臓器が高温にさらされることにより発症する障害の総称を指します。
高温環境下に長時間いたとき、あるいは、その後の体調不良はすべて熱中症の可能性があります。
重篤化すると死に至る場合もあるため、夏に警戒すべき疾患の一つです。
予防法を知っていただければ防ぐことができますし、重篤化を回避し、後遺症を軽減できます。
熱中症で大切なことは何よりもまず予防です。
- 屋外では帽子を被る
- 水分をこまめに摂取する
- 直射日光の当たる場所に長時間いない
以上のことを守って外で遊ぶようにしてください。
疫学
熱中症診療ガイドライン2015には、2013年の熱中症関連の受診は、40793人(6−8月)でした。これが近年更に増加傾向にあるようです。*1
厚生労働省HP上では提携入院期間における本年度の熱中症入院患者さんの数がほぼリアルタイムで閲覧できます。
今年の夏は真夏日に至る日がほとんどなく(7月23日時点)、熱中症による入院患者数はまだ少ない状態であることがわかります。
協力医療機関における熱中症入院患者数( 7月23日 報告分)
●ここに掲載している情報(即時情報という)は、日本救急医学会・熱中症に関する委員会(委員長: 清水 敬樹 (東京都立多摩総合医療センター 救命救急センター)による「熱中症患者即日登録調査 2019」で収集した情報に基づいています。
●熱中症の発生が危惧される令和元年7月1日~9月30日の間、当該日(0時~24時)に報告された熱 中症による入院患者数等*の即時情報を、報告翌日に公表します。(なお、土日曜日分は月曜に併せて公表)
●即時情報は、協力の得られた医療機関からの任意の報告に基づくため、日々の患者数の変化の 程度、患者の年齢層の変化等の傾向の把握に使用し、他の関連情報と総合して対策を講じることが 重要です。 * 外来診療により帰宅した患者を除いた来院熱中症患者数
厚生労働省HP*2
熱中症はなぜ起こる?
高温になったときには、汗の蒸発により、気化熱が体温を下げる働きをしています。汗をかくと水分や塩分が体外に出てしまい、血液の流れが悪くなります。高温であり、多湿なところで、風が弱く、熱を発生するものが近くにある環境では、体から外気への熱放散が減少し、熱が体内にこもり、熱中症が発生しやすくなります。
どのような人が熱中症になりやすいか?
- 脱水状態にある人
- 高齢者、乳幼児
- 身体に障害のある人
- 肥満の人
- 過度の衣服を着ている人
- 普段から運動をしていない人
- 暑さに慣れていない人
- 体調が悪い人
((熱中症環境保険マニュアル2018)
以上のリストがこちらのマニュアルに挙げられています。
熱中症と気象条件
真夏日の日数が多くなったり、熱帯夜の日数が多いほど熱中症死亡数が増えます。
暑熱環境が熱中症の発症に強く影響しています。
暑さ指数(WBGD:wet bulb globe temperature)と呼ばれる熱中症予防のため、人体と外気の熱のやり取りに着目した指数があります。
WBGT(屋内)=0.7☓湿球温度+0.2☓黒球温度+0.1☓乾球温度
WBGT(屋外)=0.7☓湿球温度+0.3☓黒球温度
この指数は環境省熱中症予防情報サイトで確認できます。
この値に沿って運動強度や、日常生活における注意事項、活動の目安を決めて活動するべきです。
予防
子供の場合は特に、発汗を始めとした体温調節能力がまだ十分に発達していません。暑さを避け、体に負荷がかかるような暑い環境にいるときにはこまめに水分補給をすることが大事です。また、急激に暑いところでの遊びをさせるのではなく、日頃から適度に外遊びを励行し、暑熱順化を促進しましょう。
当たり前ですが、子どもを車の中に放置したりなど絶対にしないでください。車の中はエンジンが切れてからあっという間に高温になります。其のような環境下ではすぐに熱中症を発症し、命の危険にさらされてしまいます。
少しの間でも絶対にそのようなことはしないでください。
症状
熱中症には分類があり、Ⅰ度が軽症、Ⅱ度が中等症、Ⅲ度が重症です。
Ⅰ度
めまい・失神:立ちくらみで一時的にふらついてしまう
筋肉痛・硬直:俗に言うこむら返りです。発汗によりナトリウムが喪失することで生じます。
手足のしびれ・気分の不快もⅠ度の症状です。
Ⅱ度
熱疲労と呼ばれ、頭痛・嘔吐・倦怠感・虚脱感を生じます。いつもと様子が違う、と感じるような軽い意識障害を認めることがあります。
Ⅲ度
Ⅱ度の症状に加え、意識障害や痙攣、手足の運動障害が生じたり、高体温、肝機能、腎機能、血液凝固障害を生じます。
発症時の対応
Ⅰ度の症状があれば、すぐに涼しい場所へ移動し、体を冷やし、水分摂取をしてください。水分だけでなく、ミネラルを補給するためには経口補水液や、スポーツドリンクを飲ませてください。
衣服を脱がせて、体からの熱の放散を助けます。ベルトやネクタイ、下着は緩め、風通しを良くします。
露出させた皮膚に濡らしたタオルを当て、うちわや扇風機で扇ぐことで体を冷やします。
冷たい水や氷を首の付根の両脇や、脇の下、足の付根に当てて体を冷やします。
誰かがそばに付き添って見守り、Ⅱ度以上の症状が出てきたり、自分で水分や塩分を取れなかったり、嘔吐が出現したり、症状が改善しなければすぐに病院へ搬送します。救急隊を呼んでいる際にも体を冷やすことができるならなるべく早く冷やして挙げてください。
Ⅱ度以上の症状が出ている場合には可及的速やかに病院へ受診してください。Ⅲ度の症状があれば速やかに救急車を呼んでください。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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どうぞよろしくお願い申し上げます。小児科医あきらでした。
参考文献
小児における熱中症 渡邉太郎 著
熱中症環境保険マニュアル2018