こんばんは、小児科医あきらです。
最近は学会発表などの準備なども診療と並行して進めなければならない状態で、更新頻度が落ちてしまっています。申し訳ありません。
日々の診療で保護者の皆さんに、「これ、知っていただけたら子どもたちのためになるかな」という内容をまとめはじめて、現在30の記事を投稿してきました。
これからも「見やすく、わかりやすく、シンプルな」内容を目指して記事を書いていこうと思いますので、是非ご覧になっていただけたらと思います。
今日は乳児臍ヘルニアに関して書いていきます。
何だそれは、とお思いかもしれませんが、いわゆるでべそと呼ばれるものです。
臍ヘルニアとは
臍帯脱落後の臍輪閉鎖遅延が原因と言われています。ヘルニア嚢と言われる、膨らみの部分は腹膜と呼ばれる、腸管に付随する組織です。ヘルニア門から脱出したヘルニア嚢は皮膚に接しています。 用手圧迫で縮小し、脱出腸管は腹腔内に還納されます。お腹にヘルニア門を触知することができ、腹圧が上がる(泣いたり咳をしたりする)と再度ヘルニアの膨隆を認めます。
気をつけなければならないその他の病気
尿膜管遺残や、臍腸管遺残嚢胞、細部腫瘤(血管腫)など、臍ヘルニアと鑑別しなければならない疾患があります。臍から膿が出てくるとか、押してもヘルニア嚢が腹腔内に戻らない、などの状態であれば、なるべく早く小児科もしくは小児外科の外来を受診してください。
実際どのくらいの赤ちゃんに「でべそ」があるの?
生まれたお子さんのおへそが膨らんでいたり、普段は普通のおへそでも泣いたりしたときに膨らんできたりすると不安になってしまうかもしれません。
しかし、実際にはそこまでに気にする必要はありません。
今日の診断指診第7版にはこのように記載があります。
臍ヘルニアは、臍帯脱落のあと、通常2~3週ごろから発生することが多い。新生児の2~3割にみられる。低出生体重児ではその頻度は7~8割に及ぶ。
-今日の診断指診第7版
実は結構な頻度で赤ちゃんには臍ヘルニアがあります。
治療したほうがいいの?
1歳までに80%、2歳までに90%が自然治癒します。そのため、この年齢までは原則、経過観察とします。
-今日の診断指診第7版
小児外科の文献をみると、いくつかの文献ではスポンジなどによる臍部圧迫療法も行われ、良好な経過を得た、という報告もありますが、現時点で高いエビデンスが得られてはいません。
UpToDateのCare of the umbilicus and management of umbilical disordersの項目を見ると、
閉塞を促進するための臍ヘルニアの「圧迫療法」についての民間伝承がありますが、この方法は皮膚合併症を引き起こす可能性があり、実行すべきではありません。
とまで記載があります。
圧迫療法を民間伝承(folklore)と記載してありました。
これら記載からも、圧迫療法は一般的ではないと考えられます。
UpToDateでは
少数の患者にのみ外科的介入が必要です。
との記載もあり、今日の診断指診では
2~3歳までに自然治癒が得られなかった場合、経過観察中、臍ヘルニアの絞扼、嵌頓を起こした場合(臍ヘルニアは押すと腹腔内に戻るのですが、それが戻らず、固くなったり赤くなったり痛みを伴うようになった場合)、結合組織脆弱な基礎疾患がある場合には手術適応
と記載があります。しかし、保護者の皆さんからみて赤ちゃんの外見に関しては大きな問題です。
「自然に治るとは言われているけど、実際どうなの?」という疑問はあると思います。上記の項目に当てはまらない場合でも、まずは気軽にかかりつけの小児科の先生や定期検診の担当医師に相談してみてください。きっと具体的なアドバイスをしてくれるはずです。
ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
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どうぞよろしくお願い申し上げます。
小児科医あきらでした。
参考文献
今日の診断指診第7版
臍ヘルニアの診断と治療(圧迫療法も含めて) -小児外科 Vol. 50 No. 8,2018‒8
スポンジによる圧迫 -小児外科 Vol. 50 No. 4,2018‒4
Care of the umbilicus and management of umbilical disorders - UpToDate