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危険!生命に危機を与えうるアナフィラキシーについてのまとめ

はじめに 

アナフィラキシーとは「アレルギーの原因となる、アレルゲンと呼ばれる物質の侵入によって、複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与えうる過剰反応」と定義されます。簡単に言えば「アレルギーの重症例」と知っていただければ良いですし、みなさんもこのように捉えているのではないでしょうか。アレルギーの診断は難しく、発症初期には進行の速さ、重症度の予測は困難です。重篤なアレルギー反応が疑われた場合にはすぐに救急要請が必要となる場合があります。以前、ハチに刺された時の対処に関して書きましたが、今回はアレルギーの中でもアナフィラキシーとよばれる状態に関してまとめています。

ハチ毒に関しての記事はこちら↓

 

www.akirano.work

 

では、実際にどんな症状なのか、どんな治療があるのかに関して順番に紹介していきましょう。
今回は、日本アレルギー学会が発行している「アナフィラキシーガイドライン」「今日の診療指針2019年度版」をもとに記載していきます。

疫学

後程記載しますが、皮膚症状つまりは蕁麻疹だけであれば、アナフィラキシーの診断にはなりません。アナフィラキシーの既往をもつお子さんの割合は小学生で0.6%、中学生0.4%、高校生0.3%と報告されています。大体200人に一人くらいの割合ですね。食物アレルギーによるアナフィラキシーにより死に至る確率は患者10万人あたり1.35~2.71人0〜19歳では3.25人である。と報告されています。

病態

アナフィラキシーは何らかのアレルゲン(抗原)となり得る物質の体内への侵入により、複数臓器に、全身性に、アレルギー症状が惹起され、生命に危険を与える過敏反応です。
原因物質として、医薬品、血液製剤、ラテックス、昆虫、食物などがあげられます。
症状が出うる主な臓器は①皮膚・粘膜、②呼吸、③循環、④消化管です。
症状が落ち着いてから1-8時間後に遅発反応として症状が再燃することもあります。
 

診断

アレルゲンに暴露してから数時間以内に皮膚症状(蕁麻疹、紅斑)に加えて、気道(嗄声、喉頭浮腫)、呼吸(喘息)、循環(ショック)、消化管(下痢、嘔吐、腹痛)などの症状が中等症以上で出現した場合、アナフィラキシーと診断します。
 
原因となりうるイベントから、数分から数時間以内に
  1. 皮膚症状+呼吸器症状もしくは循環器症状が出る場合
  2. 皮膚症状、呼吸器症状、循環器症状、持続する消化器症状のうち、2つを満たす場合
  3. 急激に血圧が低下する場合
以上の3つのうち一つに該当すればアナフィラキシーの診断となります。
小児であれば11%で二相性のアナフィラキシーという、数時間経ってから症状再燃を引き起こす可能性がありますので、アナフィラキシーと診断した場合には原則経過観察入院となります。

 鑑別しなければならない他の疾患

喘息:共通する症状として、喘鳴、咳嗽、息切れがありますが、喘息発作では皮膚症状や腹痛、血圧低下は生じません。
不安発作/パニック発作:切迫した破滅感、息切れ、皮膚紅潮、頻脈、消化器症状など生じますが、こちらも皮膚症状、血圧低下、喘鳴を生じることはありません。
失神:血圧低下により、失神をきたすことがあります。失神であれば臥位をとると軽減され、通常蒼白と発汗を伴います。蕁麻疹や皮膚紅潮、呼吸器・消化器症状は呈しません。
 

 初期対応

速やかに救急車を呼んで、下記の対応を行いましょう。アドレナリンの自己注射薬(エピペン®)が処方されている場合には大腿外側投与してください。気道・呼吸症状には、座位、循環症状には仰臥位で下肢挙上、意識障害なら回復体位(側臥位)が推奨されています。
症状悪化の可能性があるため、急に座ったり、立ち上がったりしないよう注意しましょう。現場で出来ることはここまでだと思います。とにかく、可能な限り早く人を集め、救急要請をしましょう。
 
以降は医療資源がある救急車の中であったり、病院に到着してからどのような対応をすべきかに関してお示しします。
 
  • 呼吸評価・原因物質の除去・酸素投与
気道の評価を行い、喉頭浮腫などで気道閉塞が生じているあるいは生じうると判断した場合には気管挿管を行い、酸素投与を開始します。
原因と思われる物質の投与が行われている場合には必ずその投与を中止します。
 
  • 輸液 
急速輸液を行い、血圧低下への対処とします。
 
  • アドレナリン
アナフィラキシーショックとなり、血圧が保てなくなることが何より危険です。
アナフィラキシーの診断に至った場合には、アドレナリンを筋注します。用量は体重(kg)あたり0.01mgです。。体重が20kgであれば、0.2mgとなります。部位は大腿外側が推奨されています。筋注後10分で最高血中濃度となり、40分で半減するため、16-35%の症例で症状が再燃し、2回目の投与が必要となると言われています。
 
  • ステロイド
ステロイドは、アドレナリンの反応性増強、症状遷延化の抑制のために投与します。 遅発反応抑制効果は認められていないため、ステロイドを使用しても二相性のアレルギー反応を抑制するわけではないことに留意します。
 
  • 心肺蘇生
血圧が保てず、全身への血流が保たれなくなる場合もあります。必要に応じ、心肺蘇生が必要となります。
 
  • バイタルサイン
頻回かつ定期的にバイタルの測定を行い、血圧、脈拍、呼吸状態、酸素化の評価を行います。
 
  • その他薬物治療
まず、覚えておいていただきたいのは、何より第一選択薬はアドレナリンであるということ。アナフィラキシーの診断→アドレナリン筋注は自然な流れです。

H1抗ヒスタミン薬は呼吸器症状には無効ですが、掻痒感、紅斑、蕁麻疹、血管浮腫、目・華の症状を緩和します。β2アドレナリン受容体刺激薬の吸入は、気管支拡張を促進し、喘鳴、咳嗽、息切れを軽減させます。

 

予防

 

過去にアナフィラキシーを起こしたことがある児童については、その病型を知り、学校生活における原因を除去することが不可欠です。
リスクが高いと考えられるお子さんの場合には、エピペン®を処方されます。嘔吐を繰り返したり、持続する強い腹痛があるなどの消化器の症状、のどが締め付けられたり、ひどいせきこみが始まったり、呼吸がぜーぜーし始めたりするような呼吸器の症状、爪や唇が青くなったり、意識がもうろうとしたり、尿失禁便失禁をきたすなどの全身の症状が出現した場合には迷わずエピペン®を使用しましょう。
アレルギーの診断がされた場合には、保育所や学校における除去物質などの指示をしなければなりませんので、診断を受けたクリニックや、かかりつけの先生に「生活管理指導票」の記載をお願いしてください。
 
ここまで読んでくださってありがとうございました。
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これからも小児の疾患に関して、シンプルにわかりやすく記事を書いていこうと思います。
よろしくお願いいたします。 
小児科医あきらでした。
 
 
 

*1:Umasunthar T et al.Clin Exp Allergy 2013;43:1333-41