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虐待かもしれない!小児科医が外来で児童虐待を疑ったときにすること【5選】

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悲しいことに児童虐待のニュースが絶えません。児童虐待の頻度(児童相談所への報告件数)は毎年上昇傾向にあります。
平成2年からの報告数が厚生労働省のホームページに載っています。平成2年に集計が開始され、その年度は1,101件/年でした。しかし、平成30年には159,850件に増加しています報告件数が減少している年度はありません。
増加要因としては心理的虐待に係る相談件数の増加や警察などからの通告の増加が挙げられています。
 
割合としては、心理的虐待が半数以上を占め、続いて身体的虐待、ネグレクト、性的虐待の順に多いです。
すべての項目で、毎年報告件数が増加しています。
 
死亡者数に関しては、平成19年の142人をピークにしてその後は毎年60-100人で推移しています。 3−6日に一人ずつ、虐待によって幼い命が亡くなってしまっている計算になります。
 

虐待後に小児科へ連れてくる保護者

 
そんな親いるのか、と思われるかもしれませんが、実際にそんな保護者はいます。虐待は再発率が高く、繰り返されるごとに致死率が上がっていきます。
児童虐待はもはや重症な小児疾患として扱われます。そして診断は困難です。
 

ポイント1:とにかく、子供の安全のため、まずは入院させる

 
虐待は身体的なものだけでなく、心理的なものや性的虐待もあります。なにより子供の安全を確保する必要があるため、虐待に対しての最も有効な対処は、入院ということになります。
しかし、児童相談所の所長の判断によって一時保護委託に至るまでは親権者の同意が子供の入院には必要となるため、なんとかして子供のために入院を進めていく必要があります。
 
「疑わしいその疾患を検査するためや、経過観察をするために入院が必要となります。」などと、入院の同意を得て入院させることが望ましいとされています。
 
 
虐待を疑われていることを知った親は、子供を監禁したり、脅したりして口止めする、家族と口裏を合わせる、証拠を隠蔽するなどの工作を行い、虐待の証明をすることが困難となる場合があるため、現行の法制度ではこのような対処をせざるを得ません。
 

ポイント2:子供が2歳8ヶ月以上である場合には一度保護者に診察室から出てもらう

 
この年齢を過ぎていると、大人と同じようにとまではいかないものの、子供は話が通じます。保護者が近くにいることで、話すことができない、言葉が出ないことがあります。
それ以下の年齢なら、親子分離せずに外傷の経緯や、痩せなどの原因に関して十分な聴取を行います。
 
 

ポイント3:全身を診察する

虐待を加えられた部位が服で見えない場合があります。
全身をくまなく診察して、所見があれば写真を取ります。
保護者から、「この傷はもともとのものです」など誤魔化すような発言があった場合には必ず証拠を残しておく必要があります。
 

ポイント4:全身骨のレントゲン撮影を行う

特に言葉を話せない小児では全身骨のレントゲンを撮り、十分に疎通が取れるようなら、「痛いことをされたのはどこか」確認し、その部位のレントゲン撮影を行います。
頭部外傷があれば頭部CTも実施します。
 

ポイント5:病歴聴取や検査の後、児童相談所に通告する

これは児童虐待防止法第6条、児童福祉法25条に記載されています。
虐待と「思われる」子どもを診療した医師は、児童相談所または福祉事務所に通告する義務があります。
ここで重要な事は、虐待の事実を確認する必要はないという点です。
虐待の事実確認は、児童相談所によってなされます。医師は、疑わしい症例を報告すること、身体的心理的障害を負ったお子さんを安全に保護し、診断・治療することが大事になってきます。
 

最後に

アメリカの児童虐待研究の第一人者であるC.Henry Kempe医師は
「虐待でないのに間違って保護してしまった子どもには謝罪することができる。しかし、虐待であるにもかかわらず判断を誤って保護せず、命を落とした子どもには謝罪することができない」
と言葉を残しており、これは現在の小児科診療、救急診療においても非常に重要な考え方であると考えられます。
 
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小児科医あきらでした。