以前腹痛に関しての受診の目安に関して記事を書きましたが、最近外来で虫垂炎の患者さんが続いたので、もう一度虫垂炎に関して書いていきます。前後編です。
以前の腹痛に関して書いた記事はこちらです。↓
根治治療は小児外科領域の疾患ですが、診断と保存的加療に関しては小児科でも多く診る疾患です。外科の先生、もしご覧になって、これ違うよ、という点があればご指摘いただけるとありがたいです。
大事なことを一番始めに記載します。
- 腹部全体ではなく、右下腹部に限局した痛みがあり、咳をしたときの下腹部痛悪化「咳嗽試験」、右片足立ちでかかとをついてお腹の痛みが悪化する、「踵落とし試験」が陽性なら急性虫垂炎の可能性が高い。
- 年少児の主症状は、腹痛よりも下痢・嘔吐・食欲不振が多いため、慎重な精査が必要。
概要
大腸の入口に盲腸があります。盲腸の後内側表面から突起状に垂れ下がった細長い器官が虫垂です。虫垂内腔に閉塞が生じ、細菌増殖が起こることで虫垂に一致した部位に炎症を引き起こし、疼痛と発熱(微熱)を引き起こします。
小児の代表的な腹部急性疾患で、15人に一人は障害のうちに罹患する、と言われています。急性虫垂炎は、小児期の急性腹症(急激にお腹が痛くなる状態のこと)の代表的な疾患の一つで、大人に比べると症状の進行が早く、短時間で壊死・穿孔を引き起こしやすいと言われています。(穿孔率は15.9~34.8%)*1
根治治療としては外科治療がメインですが、内科的に保存的な治療を行うことも一般的です。
手術適応は、臨床病期と、QOL(生活の質)の観点から患者さん本人、家族との話し合いにより決めていく必要があります。
診断
最も単純に示すと、「経過を聴取し、身体所見で推定し、血液検査、超音波検査、腹部CT検査で確認する」という流れが一般的です。
典型的な臨床経過としては、
臍周囲や上腹部の痛み、ついで嘔吐が出現し、やがて右下腹部の持続痛、圧痛、筋性防御が出現する。上腹部の症状は炎症の刺激が虫垂壁にあるstretch recepterに伝わり、腸間膜の神経線維を介して第10胸椎レベルの脊髄に入るために起こる。
右下腹部に痛みが移動するのは、炎症が虫垂の漿膜までに波及し、更に壁側腹膜を刺激するものである。
-*2
以上のように文献に記載があります。
身体所見
重要な身体所見は下記のとおりです。
McBurney点:右上前腸骨棘と臍を結んだ線の外側1/3の点
Lanz点:左右の上前腸骨棘を結ぶ線分を3等分した右1/3の点)
→これら圧痛点の有無
Blumberg徴候:腹壁を用手的に徐々に圧迫し、急に解除すると疼痛が著明になる
筋性防御:軽度の触診で反射的に生じる腹壁筋の緊張
Rovsing徴候:下行結腸に沿って頭側に圧迫を加えると増悪する右下腹部痛
Rosenstein徴候:仰臥位よりも左側臥位で増強する右下腹部痛
次回は画像検査・治療に関して記載していきます。
ここまで読んでくださってありがとうございます。