こんにちは、アキラです。
恥ずかしながら私は麻疹の患者さんを診療した経験がありません。
私だけではなく、卒後5年目前後の小児科医のほとんどは、麻疹を日常診療で診る機会が殆どなかったと言えると思います。これから増える可能性があるこの疾患に関して再度確認が必要と感じ、今回まずは麻疹の予防についてまとめていこうと思います。
麻疹の罹患報告数
麻疹ワクチンが1978年に定期接種となり、2006年から2回接種となりました。2008年に10000人を超える報告数があったこともあり、3期、4期の追加接種が実施された影響から(3・4期は2013年に終了)、2015年には日本全体で報告された麻疹の報告数が35件まで減少しました。
しかし、その後は165人、186人、282人と増加傾向となり、2019年は12月15日までに742件の麻疹発生が報告されています。国立感染症研究センターの報告によると2-12歳はやや少ないものの、0歳から50歳以上まで幅広く感染していることがわかります。
ワクチンがなかった時代は、数年後ごとに麻疹が流行し、ほとんどの人が罹患していました。一度罹患すれば終生免疫が獲得できるため、それ以降罹患することはありません。
麻疹の危険性
昔はみんな罹っていたのか、なら大丈夫ではなのではと思われるかもしれませんが、麻疹に罹患すると一時的に強い免疫抑制が生じ、細菌による二次感染を合併することがあります。細菌性の中耳炎、肺炎、喉頭炎などを生じることで、死亡することもあります。細菌感染だけでなく、頻度は0.1%程度と低いものの、中枢神経系の合併症として、急性期に脳炎・脳症を発症する場合があります。致死率は15%に達し、軽快したとしても後遺症を残す例が多いです。罹患後10年経過してから亜急性硬化性全脳炎と呼ばれる神経疾患を呈することもあり、この疾患も致死的な経過を辿ります。
海外での流行
麻疹は、海外でも多くの国で流⾏しており、ヨーロッパでは 2019年8⽉29⽇にイギリスを含む4ヶ国が麻疹排除国の認定を喪失しています。現在29歳から46歳の方はワクチン1回接種の世代であり、今年はオリンピックも開催されることもあり、海外から麻疹が持ち込まれて感染者が増加する可能性も考慮しなければなりません。
南太平洋の島国サモアでは2019年末に麻疹が大流行しました。5600名が感染し、81名が死亡しています。
麻疹は命に関わる病気です。感染・流行を防ぐことが命を救う最初のステップとなります。
ワクチン接種が何より大事
麻疹は発症すると特異的な治療法がなく、感染力が極めて強い重篤なウイルス感染症ですが、ワクチンが非常に有効です。ワクチン接種に関して国立感染症研究所がガイドラインを提示しています。
【定期接種対象者】
第1期定期接種対象者(1 歳児)
第2期定期接種対象者(小学校入学前 1 年間の幼児:今年度 6 歳になる者)
【定期接種対象者以外】
1 か月以内に海外旅行・国内旅行を予定している者(可能な限り 2 週間以上前に接種を済ませる。旅行直前 に接種する場合は、接種後 5~14 日の体調変化に注意が必要)
医療関係者(救急隊員、事務職員等を含む)
保育関係者
教育関係者
不特定多数の人と接触する職業に従事する人
近隣で麻疹患者の発生が認められる、生後 6-11 か月児(緊急避難的な場合に限る)
0 歳児の家族
麻疹抗体価陰性あるいは低抗体価の妊婦の家族
麻疹抗体価陰性あるいは低抗体価の麻疹含有ワクチン接種不適当者の家族
2 歳以上第 2 期定期接種対象期間に至る前の幼児で、麻疹含有ワクチン未接種あるいは接種歴不明者
小、中、高、大学、専門学校生等で、麻疹含有ワクチン未接種あるいは 1 回接種あるいは接種歴不明者
●麻疹患者と接触あるいは空間を共有した感受性者*(生後 6 か月以上に限る)に対する緊急接種は、定期、 定期外に関わらず、速やかに検討する。
●生後 6-11 か月で接種しても、第 1 期、第 2 期の定期接種は忘れずに接種する。(0 歳での接種は接種回数と してはカウントしない。)
●MR ワクチンは、通常、1 歳以上で 2 回接種する(接種記録は大切に保管する)。
●1 歳以上第 2 期定期接種対象期間に至る前の幼児で、麻疹含有ワクチン1 回接種者については、麻疹患者との接触の程度、状況に応じて、緊急避難的な場合に限って検討する。
*感受性者:麻疹に対する免疫が不十分な者(麻疹未罹患あるいは罹患歴不明で、かつ、ワクチン未接種あるい は 1 回接種あるいは接種歴不明の者、あるいは、麻疹に対する抗体価が陰性あるいは低抗体価の者)
https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/disease/measles/MRvaccine_20180417.pdf
普通に定期接種を受けられているお子さんであればそのまま定期ワクチン接種を継続していただければ問題ありません。定期接種対象外の方は上記の項目に該当する場合、接種が推奨されています。今後さらなる増加をきたす可能性がある疾患であり、自分だけでなく、周囲の大事な人を守るためにも自分に接種の必要があるかどうかを確認してください。
次回の記事で麻疹の一般的概要に関して記載していきます。